修繕費と資本的支出の判定フローチャート
修理・改良のための支出が修繕費になるか資本的支出になるかの判定は、以下のフローチャートで判定します。
解説
上記フローチャート①~⑥について解説します。
①修繕・修理・改良などのための支出
建物、器具備品、車両、機械などを修理・改良した場合は、その全部が修繕費として費用になるわけではありません。その支出が修繕費(費用)なのか資本的支出(資産計上)なのかを判断しなければなりません。
国税庁の法人税基本通達(以下、法基通という)に基づき個々に判定していきます。
②20万円未満【法基通7-8-3(1)】
法基通7-8-3(1)少額費用の損金算入
その支出が20万円未満の場合は修繕費とし、20万円以上の場合は次のステップへ進みます。
③おおむね3年以内の周期【法基通7-8-3(2)】
法基通7-8-3(2)周期の短い費用の損金算入
その支出がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが明らかである場合は修繕費とし、それ以外の場合は次のステップへ進みます。
7-8-3 一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等(以下7-8-5までにおいて「一の修理、改良等」という。)が次のいずれかに該当する場合には、その修理、改良等のために要した費用の額については、7-8-1にかかわらず、修繕費として損金経理をすることができるものとする。(昭55年直法2-8「二十六」により追加、平元年直法2-7「五」、平15年課法2-7「二十」により改正)
(1) その一の修理、改良等のために要した費用の額(その一の修理、改良等が2以上の事業年度(それらの事業年度のうち連結事業年度に該当するものがある場合には、当該連結事業年度)にわたって行われるときは、各事業年度ごとに要した金額。以下7-8-5までにおいて同じ。)が20万円に満たない場合
(2) その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合
(注) 本文の「同一の固定資産」は、一の設備が2以上の資産によって構成されている場合には当該一の設備を構成する個々の資産とし、送配管、送配電線、伝導装置等のように一定規模でなければその機能を発揮できないものについては、その最小規模として合理的に区分した区分ごととする。以下7-8-5までにおいて同じ。
④資産の価値を高めるもの、耐用年数を増加させるもの【法基通7-8-1】
法基通7-8-1(資本的支出の例示)
その支出が、資産の価値を高めるもの、耐用年数を増加させるものである場合は、資本的支出となります。通達では、以下の3つの例示があります。
- 避難階段取付
- 模様替え等の改装、
- 品質・性能が高くなるものに取替
7-8-1 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」により追加)
(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
⑤維持管理のためのもの、原状回復のためのもの【法基通7-8-2】
法基通7-8-2(修繕費に含まれる費用)
その支出が維持管理のためのもの、原状回復のためのものと認められる場合は、修繕費となります。
7-8-2 法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となるのであるが、次に掲げるような金額は、修繕費に該当する。(昭55年直法2-8「二十六」、平7年課法2-7「五」により改正)
(1) 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く。)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。
(2) 機械装置の移設(7-3-12《集中生産を行う等のための機械装置の移設費》の本文の適用のある移設を除く。)に要した費用(解体費を含む。)の額
(3) 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。ただし、次に掲げる場合のその地盛りに要した費用の額を除く。
イ 土地の取得後直ちに地盛りを行った場合
ロ 土地の利用目的の変更その他土地の効用を著しく増加するための地盛りを行った場合
ハ 地盤沈下により評価損を計上した土地について地盛りを行った場合
(4) 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。
(5) 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額
⑥60万円未満又は前期末取得価額の10%以下【法基通7-8-4】
法基通7-8-4(形式基準による修繕費の判定)
その支出が、60万円未満又は前期末取得価額の10%以下の場合は、修繕費となります。
7-8-4 一の修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理をすることができるものとする。(昭55年直法2-8「二十六」により追加、平元年直法2-7「五」、平19年課法2-7「八」により改正)
(1) その金額が60万円に満たない場合
(2) その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
(注)
1 前事業年度前の各事業年度(それらの事業年度のうち連結事業年度に該当するものがある場合には、当該連結事業年度)において、令第55条第4項《資本的支出の取得価額の特例》の規定の適用を受けた場合における当該固定資産の取得価額とは、同項に規定する一の減価償却資産の取得価額をいうのではなく、同項に規定する旧減価償却資産の取得価額と追加償却資産の取得価額との合計額をいうことに留意する。
2 固定資産には、当該固定資産についてした資本的支出が含まれるのであるから、当該資本的支出が同条第5項の規定の適用を受けた場合であっても、当該固定資産に係る追加償却資産の取得価額は当該固定資産の取得価額に含まれることに留意する。
まとめ
修理・改良のための支出が修繕費になるか資本的支出になるかは、実務では判断に迷うことが多くあります。また、判断を誤ると税額が変わり後日修正しなければなりません。1つずつ内容を理解し慎重に判断する必要があります。