国税庁の質疑応答「カード会社からの請求明細書」から考える領収書の要件
国税庁ホームページの質疑応答に「カード会社からの請求明細書」について記載があります。
カード会社からの請求明細書
【照会要旨】
法人カードを利用している場合には、カード会社から一定期間ごとに請求明細書が交付されますが、この請求明細書は消費税法第30条第9項《仕入税額控除に係る請求書等の記載事項》に規定する請求書等に該当するのでしょうか。
【回答要旨】
クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成・交付した書類ではありませんから、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。
しかし、クレジットカードサービスを利用した時には、利用者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が、「ご利用明細」等を発行しているのが通常です。
この「ご利用明細」等には、その書類の作成者の氏名又は名称、課税資産の譲渡等を行った年月日、課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容、課税資産の譲渡等の対価の額、その書類の交付を受ける者の氏名又は名称が記載されていることが一般的であり、そのような書類であれば消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当することになります。【関係法令通達】
消費税法第30条第7項、第9項
注記
平成30年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
わかりにくいかもしれませんが、
もっとわかりやすく言うと、
- カード会社から届く1ヵ月合計をまとめた請求書ではダメ
- 店舗でカードを利用した際に受け取る領収書やご利用明細書はOK(①~⑤の記載があるもの限定)
ということです。
クレジットカードを利用した際は、必ず領収書又はご利用明細書をもらうようにしましょう。
必ず領収書が必要です!
領収書がなくても大丈夫という方が周りにいるかもしれませんが、それは今のところ税務署から指摘されていないだけと考えましょう。
消費税法上の領収書の要件
消費税法上では、領収書の要件が定められています。以下の要件を満たさない場合は、消費税を控除できません。
- 取引の相手方の氏名又は名称
- 取引年月日
- 取引内容※1
- 取引金額(税込)※2
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称※3
※1.令和1年10月1日~令和5年9月30日までは、軽減税率の対象となるものはその旨を記載する必要があります。
※2.令和1年10月1日~令和5年9月30日までは、税率の異なるごとに区分する必要があります。(8%、軽減税率8%、10%)
※3.小売業・飲食店など不特定多数の者を主とする事業の場合は、記載を省略できる。
複数税率ある場合は、注意が必要になりました。
小売・飲食店などの領収書は、宛名なしでも問題ないです。
所得税法・法人税法上の領収書の要件
所得税法・法人税法においては、領収書の保存義務は定められていますが、領収書の記載事項の要件は定められていません。
一般的には、消費税法と同様の要件と考えられますが、そのすべての要件を満たさない場合に直ちに否認されるとは考えにくいです。
つまり、クレジットカード明細を領収書代わりにしても必要経費(損金)として認められると考えられます。
領収書の保存期間
確定申告に使った領収書は、一定期間保存しなければなりません。
保存期間は、税目により異なります。
- 消費税:7年
- 所得税(青色申告):7年(前々年所得300万円以下は、5年)
- 所得税(白色申告):5年
- 法人税(青色申告):10年
- 法人税(白色申告):7年
- 会社法:10年
ただし、税務署から領収書を確認された際に領収書が無い場合は、経費や消費税が認められない可能性があります。
出来る限り、上記の保存期間を守りましょう!
領収書を紛失した場合の対処法
領収書を紛失してしまうことは時々ありますね。また、領収書が発行されないこともあります。
領収書を紛失した場合や領収書が発行されないものは、「出金伝票」を作成することで代用できます。
出金伝票に記載する内容は、
- 取引年月日
- 取引先の名称又は氏名
- 取引内容
- 取引金額
ただし、あくまでもやむを得ない場合ですので、乱用は認められませんので注意してください。
まとめ
確定申告において、クレジットカード明細が領収書の代わりになるかを解説しました。
確定申告では、 「消費税」と「所得税・法人税」は別物と考えます。「消費税」と「所得税・法人税」では、領収書の要件が異なります。
消費税:カード明細では領収書代わりにならない
所得税・法人税:カード明細で領収書代わりになると考えられる
消費税で考えた場合は、クレジットカード明細では領収書の要件を満たさないので、別途領収書を発行してもらい保管する必要があります。
私のクライアントにおいても消費税と所得税・法人税の要件を混同して「クレジットカード明細が領収書代わりになる」と思っている方が一定数存在し、その都度説明しています。
自分の身を守るためにクレジットカード支払いの領収書は保管しておきましょう。なお、領収書の保管期限は、税目ごとにことなりますのご注意ください。